つながり

講談社文芸文庫の『現代アイヌ文学作品選』です。知里幸恵から萱野茂まで、何人かのアイヌ民族の書き手の、アイヌ語や、アイヌ語を日本語に翻訳したものや、日本語で書いたものなどの中から、注目すべきものを選んだものです。
その中に、知里幸恵の日記が少し収められていて、1922年6月の記事があります。金田一京助が、幸恵に中条百合子のことを語っているところがあるのですが、金田一は〈芸術が高尚な尊い物であるのとおなじく、家庭の実生活も絶対に尊い物である事にまだ気がつかないのはまだ百合子さんが若いのだ、かわいそうに〉といったのだそうです。
啄木の生涯をつぶさにみてきた金田一のことですから、こうした印象をもったのでしょう。ちなみに、新しい宮本百合子全集の第1巻の月報に、金田一の文章(1956年のものです)が再録されているのですが、それによると、バチェラーさんのもとで、百合子と八重子さんとに金田一は会っていますし、荒木と夫婦そろって同じ会合に出席したこともあったようです。そういうつながりの上での発言として読むべきものでしょう。