利用法

原克さんの『流線型シンドローム』(紀伊国屋書店、2008年)です。
1930年代から流行した〈流線型〉について、アメリカ・ドイツ・日本の受容を軸にまとめたものです。
アメリカでは、流線型という概念が、単に汽車や自動車だけでなく、女性のスタイルまで表現の対象として、下着のコマーシャルに使われたというのです。
一方、ドイツでは、あくまでも科学技術のレベルのことばとして禁欲的に使われ、それがNSDAP時代の技術の優越をあらわす用語として、ナショナリズムの昂揚に一役買ったようです。
さて、日本では、そうした技術のことばでもあった(満鉄の特急あじあ号のように)のですが、それにとどまらず、単なる〈時代の最先端〉をあらわすキーワードとして、本来の使い方とはまるっきり違う方面に使われたというのです。『流線型アベック』というタイトルの、若い男女向けのデートスポットを解説した本まで出版されたとか。
労働者のくびきりを〈リストラ〉とかいうように、軽い語感のことばにしてしまうような日本の〈伝統〉は、昔からあったのですね。