入り日

今年のセンター試験、小説は加藤幸子さんの作品です。
干潟の近くに住む老婆が、そこを埋め立ててごみ焼却場にしようとする役所の思惑を、はぐらかしながら生きているという場面が、設問とされました。そこでは、立ち退きを迫ろうとした役所の人間を追い返したあと、老婆が飼い猫とともに干潟に出る場面があります。夕陽に染まる干潟は、だんだんと暮れてゆくなかで、徐々に冷徹な面を見せます。人間のいとなみをあざわらうかのように。
でも、そうしたメッセージをよみとるには、試験時間は短そうです。そんなことを考えるまもなく、設問を解くのに追われるのでしょう。それはつらいことかもしれません。

ちなみに、評論は鷲田清一さん、古文は『保元物語』でした。