何のために

石原藤夫金子隆一さんの『軌道エレベーター』(ハヤカワ文庫、2009年、親本は1997年)です。
静止衛星の軌道上に衛星を載せ、そこから地上にケーブルをおろして、物品を運ぶというのが、この〈エレベーター〉なのですが、もちろん、それを実現させるには大きなハードルがあります。自分の重みに耐えるだけの材料がなければならず、カーボンナノチューブでもできるかどうか。
ただ、液体水素をつかったロケット推進では、限界があるのも事実で、せいぜい火星にいくのがやっとというところでしょう。それに、静止軌道もだんだんと混雑してきて、スペースデブリが増え続けると、衛星も打ち上げられなくなるし、静止軌道を越えて宇宙船を出すこともできなくなります。
もちろん、そこに問われるのは、宇宙への進出が、単なる知的好奇心ということではなく、そこには何らかの利益を求める気持ちがあるのではないかということです。月の表面にあるヘリウム3を採取して核融合発電のエネルギーにしようという発想は、SF過ぎると笑われるでしょうが、このまま化石燃料を浪費していいのかということとも関連させると、単純にかたづけるわけにはいきません。技術の進歩は何を目的にするのか、そろそろ考えなければいけませんね。