伏流水

土橋寛『古代歌謡の世界』(塙選書、1968年)です。
著者は、日本の古代歌謡を単純に抒情的な側面から理解することを戒め、現代に伝わる民謡の分析から、それと共通する面を見出し、そこをきちんと位置づけるべきだという立場にいます。
農村の社会基盤が変わらないならば、そこに反映している芸術のありようも、そんなには変わらないだろうというのは、たしかにいえることでしょう。その筋では、20世紀前半まで受け継がれていた習俗が、必ずしも古代にさかのぼるものではないという意見もあるのでしょうが、水田耕作が一定の共同作業を必要とするならば、村落共同体というもののありようも、変わらない面があるということなのでしょう。
いま農業への企業参入がいわれていますが、それが日本の風土にあっているのかということも、本来ならば検討されるべきでしょう。