あっという間に

高良倉吉さんの『琉球の時代』(ちくま学芸文庫、2012年、親本は1980年)です。
薩摩に敗北する前の、いわゆる古琉球の時代の王国のありようを追跡しています。この時代の琉球国は、東アジアで中継貿易を基盤にした国家をつくりました。
それ以前の政権は伝説的なものばかりですし、古琉球国も、実際の当時の社会を髣髴させるような説話もほとんどない、という、ある意味では偏った発達をとげた面もあることも、著者の視程にははいっています。貿易で得たはずの〈富〉が、民衆に還元されて生活や文化を発展させた形跡がないのです。
そうしたところが、琉球国をなぞめいたものにしているのでしょう。そこをよく知ったうえで、日本列島の多様性をみなければならないのでしょう。