あわせ技

『図書』3月号には、長谷川櫂丸谷才一岡野弘彦のお三方による歌仙「ずたずたの心の巻」が載っています。震災のあとから始めた歌仙で、手紙やネットでのやりとりでつくりはじめたものだとか。丸谷追悼の意味もあるでしょう。
発句が長谷川さんの「ずたずたの心で春を惜しみけり」で、それに丸谷さんが「敢へて飾るか旧暦の雛」と脇をつける。それに岡野さんが「流しやる潮路のはても霞むらん」と第三をつけます。
この三つ物だけでも、すぐれものだといえましょう。震災と供養、そこに雛を形代として流すという形がついて、世界が立ち上がります。
どこぞのテレビで、雛の形代に扇をあてるというゲームが批判されたと聞きますが、もともとの雛の使い方からみると、決して非難されるべきではありません。一知半解で〈日本文化〉を語る「愛国者」には困りますね。