たらいまわし

宮崎市定『隋の煬帝』(中公文庫、1987年、親本は1965年)です。
煬帝の一代記というより、隋という国がどうしてできて、そして滅んだかを、追ったものだというほうがふさわしいでしょう。いわゆる魏晋南北朝期というのは、政権の主だけはいれかわっても、それを支える貴族システムは変わらないので、皇帝という地位が何の保証にもならないということが、みえてきます。そのような同質の社会では、結局は政権をとっても、個人的な奢侈にふけり、最後は同族で猜疑心にかられて同士討ちを演じて、次の実力者に簒奪されることを繰り返しているのです。
決して過去の話ではないようにも思えてしまうのです。