融通無碍

日本思想大系『国学運動の思想』(松本三之介、芳賀登校訂、岩波書店、1971年)です。
国学そのものというより、幕末の国学者による改革論を中心に収録しています。越後柏崎で乱をおこした生田万だとか、井伊直弼のブレーンだった長野義言だとか、そうとうなまぐさい人たちのものがはいっています。
もともと江戸時代の思想の多くは、庶民の生業を肯定するものが多く、いわば生活倫理的な側面があるのですが、それは容易に現状の容認、体制擁護のほうに向かいます。そこまでは、国学に限らないことかもしれませんが、国学は、現状が万世一系の天子様をいただく体制をあっさりと認めるようになる。それを生かして、太陽がアマテラスだから、地球が太陽のまわりをまわるのは当然だと、地動説も簡単にうけいれる。さらには、外国の『帝国』と称するものは、弑逆と簒奪の繰り返しだから、そんなものはおかしいと、ローマの皇帝の歴史をひもときながら主張し、排外ナショナリズムをあおるというように、自説に有利なものならなんでもうけいれるという形がめだちます。
その点では、いかにも日本的なものなのかもしれません。そう思って読んでいくと、けっこう考えるところはありそうです。