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水上滝太郎『銀座復興』(岩波文庫、2012年)です。
関東大震災の被害を受けた東京銀座に、復興をねがってバラック造りのにわか居酒屋を開業する夫婦の生き方と、老舗でありながら、もう復興は不可能だと諦観して郊外荻窪にひきこもろうとする男との対比をとおして、当時の時勢を描いています。この作品、1931年の作ですから、復興を描くのにも、事件から10年近い年月が過ぎているわけで、それくらいの時間の経過は必要だったということでしょう。
作者は、鎌倉で被災したので、津波の被害にもあったそうです。鎌倉の津波は、里見とんも書いていたように思います。そうした個々の事象を重ねることで、みえてくるものもあるでしょう。