統合の代償

纐纈厚さんの『侵略戦争』(ちくま新書、1999年)です。
当時うごめきはじめていた〈歴史修正主義〉の考え方に対して、歴史事実を軸とした批判を意図して書かれたものです。
そこで、著者は、近代日本のなかにあるアジア諸国への差別意識が、日清戦争以前から醸成されていたことを指摘します。このことは、関谷博さんの『幸田露伴の非戦思想』でもふれられていましたが、近代日本が、中国や朝鮮に対して見下す意識をもっていたことは、現在の状況からみても、考え直さなければならないことでしょう。
たしかに、幕末の情勢のもとで、『日本国』を束ねるために、『攘夷』というスローガンが全く意味をもたなかったとは言いません。けれども、幕府にかわって政権をとるときに、絶対主義的な排外体制しか選択の余地はなかったのかは、検討されなければなりません。

この本が、重版されて継続的に入手できるようにはなっていない、というのも今の日本のありようなのですね。