文学の鬼

水上勉宇野浩二伝』(中央公論社水上勉全集第16巻、1977年)です。
昔は、『小説の神様志賀直哉』『文学の神様=横光利一』みたいなニックネームがあったようで、宇野浩二は『文学の鬼』といわれていたようです。著者は戦後まもなく、出版社勤務の頃に宇野浩二と知り合い、最晩年までいろいろと関係があったということで、この伝記を書いたとのこと。
最晩年の松川裁判への支援のこととか、中国を訪問して向こうの作家が体制を擁護するのに違和感を感じたこととか、最後まで文学の立場からの発言を続けたことも、大切なエピソードでしょう。全集版で880ページほどの大冊なので、読みごたえがありますね。