障壁

右文書院から出ている金石範さんのインタビュー、『金石範《火山島》小説世界を語る』(2010年)です。
金さんの小説をめぐって、興味深い話が展開されていて、小説の方法や、事実や体験と文学との関係などの話題が展開されています。
体験していなかったからこそ『済州島4・3事件』を書けたのかもしれないという趣旨のことばもあり、体験をどうとらえるかについても、考えることはありそうです。
その中で、今の日本の〈文壇〉のありようについても、意見を述べています。目取真俊さんについても、〈芥川賞はとったが、干されるかもしれない〉という趣旨の意見を金さんは言います。そうした目に見えない〈圧力〉を感じているのでしょう。

以前、文化団体連絡会議(文団連)の機関誌『まい』に、浅尾大輔さんの作品集『ブルーシート』について書いたときに指摘したことがあるのですが、彼にしても、一般文芸誌に書く作品は、〈連帯〉を拒否する流れをとりあげて作品にしています。もちろん、それも現実のリアルな反映ではあります(その極端な発現が、この前死刑判決を受けた、自動車会社で仕事をしていた彼でしょう)ので、そうした否定的な現実を作品にするのは彼なりの社会への発信であるのですが、浅尾さんにも、同じようなことがいえるのかもしれません。