ぐるっとまわって

片山潜・田添鉄二集』(青木文庫、1955年)です。
当時青木文庫では、〈資料日本社会運動思想史〉というシリーズを企画していて、その中の1冊なのです。片山の『我社会主義』(1903年)、田添の『経済進化論』(1904年)『近世社会主義史』(1908年)の3つの著作を1冊に収めています。
それぞれ、当時の資本主義のなかの格差の発生と深化を分析し、社会主義への展望を述べたものです。そこでは、ドイツなどでの社会主義勢力の議会への進出も語られています。ラサールとマルクスエンゲルスが同列に並ぶのは当時の認識としてはしかたがないとは思いますが、ベーベルの名もありますし、社会主義の歴史では、空想的社会主義から科学的社会主義(両方とも当時からある日本語です)への発展を述べています。
もちろん、当時の日本では、治安警察法などの弾圧法規もありますから、労働者が団結することも難しかったわけですし、議会も労働者の代表を送り込める状況でもありません。それでも当局は、ことあるごとに弾圧の機会をうかがっていたわけで、1910年には〈大逆事件〉が仕組まれることになるのです。
さて、100年経ったいま、こうして、未来への社会変革を、どう語るのか。先人の足跡をよくみながら、考えなければいけませんね。