終わりはない

山形暁子さんの『女たちの曠野』(新日本出版社)です。
1940年生まれで高校卒業して銀行に就職した女性の自己形成史と、1997年からの、銀行でのコース別人事が結果的に女性差別になっていることに対してたたかう女性たちの群像とを、交互に組み合わせた構成になっている作品で、そうした重層的な形が、雑誌掲載時には少し読みづらかったのですが、単行本にまとめられると、けっこうすっきりと入ってきます。
今の社会、銀行が資金を融通しないと、事業はできませんから、銀行の力は大きなものがあります。その中で働くひとたちが、人間として尊重されているかどうかは、当然銀行が顧客に対してとる態度とも関連するはずです。山形さんの作品は、銀行の内部でおこなわれている女性差別を、それとたたかう人たちを描くことであぶりだします。たたかいは、決して労働者側の勝利とはいいきれないものがあります。銀行側は、あの手この手をつかい、差別構造を温存しようとします。その意味では、作品世界は終わっても、現実の世界は終わりません。それは、読む側にとっても、問いかけとなっているのです。