地面の上で

水上勉『古河力作の生涯』(平凡社、1973年)です。
若狭出身で、大逆事件連座して死刑に処せられた古河の生涯を、同郷の著者が追いかけたものです。今年が100年ということでもなかったら、ひょっとしたら手にしなかったかもしれませんが、平易な文章は、古河という人物の人となりを、分かりやすく描いています。前にも書きましたが、当時の日本の社会変革の運動は、度重なる結社の禁止や出版弾圧をうけて、組織的なものではなくなっていました。個人的なつながりにたよる運動が、逼塞していくのはやむをえなかったのかもしれません。古河も、園芸のみちで、自分の能力を発揮していたのですから、そこから社会のありかたを変えねばならないと考えたのでしょう。それだけに、爆裂弾的なものに引きずられるというのは、痛ましい感じがします。