はたらくこと

大浦ふみ子さんの『ながい金曜日』(光陽出版社)を読みました。書き下ろしの作品のようです。大浦さんは、長崎に住みながら作家活動を続けていて、今までも何冊か作品集を出しています。社会的な事象、それも最新の社会問題をいち早く作品化することがよくあります。この前も、佐世保の小学生の同級生殺害を作品の中に取り上げたものがありました。大浦さんの特質は、そうした新しい事件をあつかっても、それを単なるセンセーショナリズムにするのではなく、その背景にふみこんでいくところにある、というところでしょうか。
今回の「ながい金曜日」は、米軍基地のあるS市の造船所ではたらく23歳の青年労働者の一日が作品の舞台です。彼は、つきあっている女性(彼女は放送局につとめています)から、子どもができたと知らされます。しかし、結婚をすぐ決意するには、彼には障害がありました。それは、彼が会社の中で、リストラ予備軍とうわさされている〈塗装G課〉に配属されていることなのです。
作品は、その職場のなかでおきるさまざまなできごとと、G課に配属されてもその中で労働者の要求をまとめて会社とたたかおうとするベテランの労働者と主人公のふれあい、そして、高校時代からの友人で、かつては彼女をめぐって三角関係みたいな状態になっていた男との再会、というできごとをからめながら、主人公が働き続けることの意味をさぐっていきます。三角関係のライバルとの場面が少し流れがよどんでいる感じはありますが、現代の(作品の舞台は2002年の1月です)青年労働者の実態に迫った、よい作品であると思います。青年労働者が、自分たちの世界で完結しているのではなく、同じ職場のベテラン労働者とのかかわりで自分の姿をみつめていくというところに、作者の、労働者のたたかいが世代を超えて受け継がれていくことへの確信を読み取ることが出来るのです。