ネーミングの寓意

浅尾大輔さんの「ソウル」(『民主文学』10月号)です。
作者を思わせるような、35歳独身で、渦潮社の文学賞を受賞した経験ある人物の視点から、現在の若者の抱えている状況や、社会の中で傷ついている人々を描いた作品で、久しぶりの登場です。
タイトル自体が魂のソウルと韓国のソウルとを二重写ししているような感じで、そういう考えさせる名づけが、登場人物にもあります。
傷夫(きずお)圧死(あつし)寂也(じゃくや)痛身(いたみ)切人(きりひと)というように、男性には漢字をあてて、何かしらひどい目にあっているような雰囲気をつくっています。
一方、女性はなつみ・しおり・まひるというように、すべてひらがな。韓国から来ている女性には「和宣」(ワスン)と漢字をあてています。
こうした使い分けの意味するところがよくわからないのですが、(女性を特別視するとはこの作者らしからぬものだから、そういうことではないのでしょうが)とりあえずは、男性の名前が寓意を含んでいることは注意しておく必要があるかもしれません。