持続

増田勝さんの『茜色にそめて』(私家版、2013年)です。
増田さんは、長く名古屋の民主主義文学運動の中心を担ってきた方です。この作品集にも、『名古屋民主文学』に掲載された作品が多く収められています。
労働者の生活をしながら文学にこころざすのは、決して簡単ではありません。たしか、松田解子の『回想の森』にあったエピソードだと思うのですが、1930年代はじめ、当時のプロレタリア作家同盟が、労働者のなかから文学にこころざす人たちをあつめて文章講座のようなものをひらいて、松田さんが講師役をつとめたのですが、何かで検束されて、警察から、「あんなおっさんが作家になれると思っているのか」とばかにされた、ということがあったそうです。そうした、はたらきながらの文学を見下す傾向は、今でもなくなってはいないようにも思えます。
そういう中で、増田さんが長く文学をつづけてきたこと、それを可能にした文学運動の存在は、もっと光をあてられていいものだと思います。