原動力

『人類と機械の歴史 増補版』(リリー著、伊藤新一、小林秋男、鎮目恭夫訳、岩波書店、1968年、原著は1965年)です。
著者(1914-1987)はケンブリッジに学んだ、イギリスの科学史家のひとだそうです。原著の初版は戦後まもなく出版され、日本語訳も岩波新書で出ていたものを、増補版が出たので翻訳しなおしたようです。
文明の成立期から20世紀までの人間の技術の歴史をたどり、どのような機械がどのようにしてあらわれたかをたどります。その中では、技術の進歩は一直線ではなく、社会がそれを必要としないならば、技術は遊びの方向にいってしまうといいます。技術の進歩をいかすためには、場合によっては社会構造の変化も生じるのだというのです。
たしかに、江戸時代の日本をみても、からくり人形などは発達したわけですが、それが近代機械工業には必ずしも直接的には結びついていないことは事実です。そこに潜在した力が、人びとの生活と結びつくには、幕藩体制の崩壊が必要だったことにはまちがいがないでしょう。からくり儀右衛門が東芝になっていく過程を考えればいいのでしょう。
技術の進歩を生活の向上に結びつけられる社会とは、どこにあるのか、よく考える必要があるようです。