西は西

岩波文庫川端康成随筆集』(2013年)です。
ノーベル賞講演の「美しい日本の私」など、著者のエッセイや、横光利一への弔辞のような知友を悼む文章などが収められています。
戦後の川端が、日本回帰ともいうべきこころを一貫して持ち続けていたことがそれなりに理解できる編集だとは思いますので、読みごたえはあるといっていいのでしょう。
摂津茨木に育った川端、伊賀上野で中学時代を送った横光と、かれらが日本回帰にはしるのも、やはり土地の呪縛なのでしょうか。保田與重郎も大和桜井ですし、この人たちのいう〈日本〉は、永井荷風の〈日本〉とは、肌合いが違って感じられます。