土地のもの

葉山嘉樹・真実を語る文学』(花乱社、2012年)です。
〈三人の会〉という、福岡県豊津出身の堺利彦葉山嘉樹鶴田知也を顕彰する会があるのだそうですが、そこが主体となって、葉山の記念講演会の記録と、関連する論考・回想・エッセイなどをあつめて出したものだそうです。出版社は福岡市にあります。
葉山嘉樹というと、セメント樽の舞台になった木曽川発電所だとか、鉄道建設の飯場にいた伊那地域だとか、そうしたイメージがありますが、福岡の出身だということで、こうした会が郷里にできているのは、徳永直が熊本でやはり会をつくられているのと似たようなところがあるのかもしれません。
葉山が無事引揚げてきて、戦後も作家活動を続けられたら、どんな作家になったでしょうか。満洲開拓にかかわった自分を、どうみつめることになったのか、そこは興味深いものがあります。
かもがわ出版から葉山についての小説を刊行した原健一さんや、室蘭で葉山の文学碑建立にたずさわった西原羊一さんも寄稿しています。それも、おもしろいことではあるでしょう。