地に足をつける

谷川健一さんの『四天王寺の鷹』(河出書房新社、2006年)です。
聖徳太子物部氏討伐のあと鎮魂のために建立したという、四天王寺に、物部守屋をまつるお堂があったり、守屋の子孫が今でも寺の行事にかかわっているということをスタートにして、物部氏秦氏の伝承を通して、彼らのかかわったさまざまな「わざ」の世界を探ろうとしています。そこには、金属の採鉱から精錬にかかわる人たちや、宮殿造営のための木材の切り出しから輸送にかかわる人びと、河川の堤防などの治水の工事にたずさわる人のような、さまざまな『職』があらわれます。
そうした人びとのいとなみがあってこそ、支配する側も生活を維持し、権威をあらわすことができるわけで、大仏を造立するにしても、銅を採鉱したり、メッキする金やそれに使う水銀を手にしなければなりません。そうした技術の上に、生活も思想も生まれるのですから、人間社会の底にあるものを、気にしていかなければならないのでしょう。