流されない

伊部正之さんの『松川裁判から、いま何を学ぶか』(岩波書店)です。
今年は松川事件60年ということで、『民主文学』でも特集をくみましたが、伊部さんは、福島大学で長く松川資料室を運営された方で、この事件の起こりから、裁判のうごき、全員無罪確定をもたらした運動の広がりなど、幅広く目配りをしています。被告を支援する運動にかかわった中に、意外な名をみるのも、おもしろいものです。『民主文学』11月号に小説を書いた原史江さんも、仙台で学生時代に松川支援の運動にかかわっていたとか、そうしたつながりもあるのですね。

最初につかまって、「自白」をした赤間さんは、最初は地元の弁護士をたのみ、弁護側も、最初は〈罪〉を認めたうえで、情状酌量をもとめる弁護方針で行く予定だったのだそうです。それだけ、マスコミなどをつかった世論誘導もあったということでしょうか。裁判員裁判が導入されても、そうした事前の思い込みで法廷が動けば、真実をみきわめるのはむずかしいでしょう。そういうことも含めて、松川事件から考えることは、たくさんあるようです。