一元化

うえのたかし(1940-2009)の、『古事記』に材をとった画に青木陽子さんが文章をつけた画文集『あなにやし』(私家版)です。
うえのさんは、岐阜県で画の活動をされていた方のようで、『古事記』の上巻、いわゆる神代の部分の伝承を絵にしています。ダイナミックな絵で(水性木版画というらしいのですが)、〈神代〉の人びとの営みを描き出しています。
古事記』は、ごぞんじのように、8世紀初頭につくられた、伝承を重視した、当時の人びとが歴史だと思ってほしいことを記しています。天地創造からはじまるのですが、『日本書紀』の伝承と、細かな異同はあっても、大筋では一致しています。それだけ、当時の権力者は、伝承にも統一性を求めたのでしょう。
伝承そのものには、古代の人びとのいろいろな意識が反映していますが、書物としては、そうした力がはたらいたことは、考えておくべきでしょう。