合う合わない

泉鏡花の『外科室・海城発電』(岩波文庫、1991年)です。
鏡花の作品は、ずっと昔に『高野聖』と『歌行燈』しか岩波文庫になかったときに、その2冊を読んで、どうにも趣味があわないと感じて、そのあとずっと遠ざけていたのです。好きな方にはたまらないのか、その後岩波もたくさん文庫にしているようで、この『外科室』には12という番号がついています。
収録されたのは、いずれも日清戦争前後の、鏡花にしてみれば初期の作品といっていいものですが、やっぱり、その世界の極端さがどうにもなじめません。いずれも、なかなか道理や人情の思い通りにならない世界の不条理を描こうとしているのはわかりますし、そこに鏡花なりの社会への視点があるのも、理解できないわけではありません。
でも、好き嫌いに類することなのかもしれません。
しばらくまた、鏡花の作品は読まないことでしょう。