終戦と敗戦

引き続き、佐藤卓己さんが中心になってまとめた、『東アジアの終戦記念日』(ちくま新書)です。日中韓の学者たちが集まって、それぞれの「終戦」意識の実態についてさぐったものです。
北海道の経験、沖縄の経験、韓国や北朝鮮、台湾や中国など、日本内地だけでない地域の状況を実証的に追求しているのは、今後の議論のとっかかりになると思います。
前にも書いたのかもしれませんが、たしかに、ミズーリ艦上で調印したのは降伏文書ですから、それは「敗戦」の日であることにはちがいないでしょう。けれども、「玉音放送」の記憶は、その後の日本国民の意識のしたで、憲法九条につながる〈戦争をしない国〉の基盤にあるのではないでしょうか。(それが、佐藤さんたちのいう、つくられた記憶であっても)それは、〈もう戦争はしないのだ〉という意味での、〈終戦=戦争にものをいわせる時代のおわり〉のはじまりの日にはなるのではないかと思うのです。
その点では、この本のカバーにある、「世界に対して目を閉ざし、対話を拒否する姿勢」ではないのだと思います。そのへんは、もっと議論していかなければいけないのではないでしょうか。もちろん、「固執」するつもりはないのですけれど。