集めてみる

講談社文芸文庫『明治深刻悲惨小説集』です。
有名どころでは、樋口一葉の「にごりえ」とか、泉鏡花の「夜行巡査」とかもありますし、文庫などに初収録ではないかという田山花袋「断流」など、1890年代後半の格差や貧困、差別にまつわる作品を集めています。救いのない作品ばかりですから、読んでいてつらくなるものもあるのですが、これも当時の日本社会の現実の一面であることも事実でしょう。こうした作品をきちんと集めて、読めるようにしておくというのは重要なことです。
これらの作品、多くは雑誌『文芸倶楽部』に掲載されています。当時の文芸誌のなかで権威あるものだったのでしょう。今は博文館といえば、日記の出版元として知られていますが、120年前は先端をいく出版社だったのですね。