作為の「伝統」

村上重良『日本史の中の天皇』(講談社学術文庫)です。親本は1986年に出て、文庫も2003年という、いささか古い本ではあるのですが、読みごたえがありました。
特に、明治になって、新しい天皇の権威を作り出すために、宮中祭祀のありようも新しい行事をつくりだしたとか、祝祭日を新規にしたとか(祝祭日は国民生活とかかわることなので知っていたこともありましたが)、そうした知見を得ることができたのはよかったと思います。
代替わりだとか、「なんとかの礼」だとか、そうした行事がおこなわれてずいぶんになりますが、それがもともと決して本当の意味での「伝統」ではなかったことを知っておくのは、そのうちくる「次」の時代だとか、「後継者」の問題だとかに対しても、きちんとした対応ができることにつながるのでしょう。