広く知る

中村栄孝『朝鮮』(吉川弘文館、1971年)です。
著者(1902-1984)は、戦前朝鮮総督府のもとで、『朝鮮史』の編纂に携わったかたで、戦後は名古屋大学天理大学朝鮮史の研究をされたということです。
ですから、この本の中には、戦前に書かれた論文も収められていて、著者の今までの研究内容が、一般向けにもわかるようになっています。
朝鮮王朝が明国の冊封を受けて、金印をもらっていたということなど、意外に実態は知られていないようですし、檀君神話が堯の即位とリンクさせて年代を決めたものだという考察もあり、知っていてしかるべきことは、まだまだあるのだとわかります。
もちろん、日韓条約に付随した『文化財返還』問題を肯定的にとらえているのは、当時としてはやむをえないものだったかもしれませんが、今となっては不充分な認識ではあったといえるでしょう。
それでも、最近のいやな事象ばかり耳にはいってくる中で、冷静になるための勉強には必要なものでしょう。