知っておくこと

甲斐よしひろさんの『九州少年』(ポプラ文庫、2010年、親本は2008年です)
甲斐さんがデビューして上京する以前のいろいろな思い出をつづったもので、1960年代の福岡の姿が描かれています。その中に、幼い甲斐少年が、親に連れられて〈博多温泉センター〉というところに出かけていって、〈博多淡海〉と言う芸人の技を見る場面があります。このひとは、「座布団に座ったまま微動だにせず、いきなり1メートル以上も垂直に飛べる」芸を売り物にしていたというのです。
ずいぶん昔に、〈空中浮遊〉をパフォーマンスにしていた〈教祖〉がいましたが、見世物であるはずのものをそうした〈信者獲得〉に使うことのあやうさを感じてしまいました。本当に〈超能力〉だと信じこんでいた人も多かったのではないかと思いますが、何でも経験しておくことは大切でしょう。世の中に、むだなものはないのかもしれません。