なまなましい

李恢成さん『地上生活者』第4部(講談社)です。
主人公趙愚哲が、組織から離れ、作家として自立していく時代をあつかっています。時期的には1966年から光州事件の1980年あたりまで。主人公個人の問題でもいろいろあったようですし、朝鮮半島も、南北ともにあれこれあった時期です。
さらに、一部の人間には、あきらかにモデルがわかるような命名がされていて(〈金達鎮〉だとか、〈雁雨植〉とか、〈大湾健三郎〉や〈金地下〉など)、これでいいのかとも思ってしまいます。どこまでが虚でどこからが実なのか、そこが読ませどころなのかもしれませんが、ゴシップ的に読まれることも、これでは拒否できなくなってしまうのではないでしょうか。だいいち、金大中は実名で、李厚絡があからさまな仮名だというのも、ほんとうはどうなのでしょう。