これもずらし

李恢成さんの『地上生活者』の第5部が、『群像』ではじまりました。
前にも書きましたが、自伝的なこの作品、モデルがけっこうあからさまです。今回は、対談の相手が、「海辺の光景」を書いた「保岡庄太郎」さんと、声に出して読めば仮名(かめい)にならないのです。実際に行われた対談は、同時代社から1982年に出た、『風よ 海をわたれ』に収められています。
ただ、実際の対談は、『群像』の1979年10月号掲載ですから、光州事件どころか、まだ朴正煕在世のときに行われて世に出ているので、そこを作品ではずらしているようですね。『見果てぬ夢』全6冊にしても、1981年に(大学生協で注文して)買ったときに、重版されて値上げされていたばかりのものだったので、想定していたよりも出費が多かった記憶があります。対談のために売れ行きが落ちていったというのは、つくりごととみたほうがいいでしょう。