発表場所

桶谷秀昭さんの『危機と転生』(泰流社、1976年)です。
とくに、統一したテーマがあるというわけではなく、いろいろなところに発表した文章をまとめた評論集なのですが、最近は、こうした本が少なくなってきたように思います。
巻末に、収録した文章の初出が出ていますが、文庫本の解説とかもありますが、主力は、啓蒙的学会誌(『国文学』や『解釈と鑑賞』)や、書評紙(『週刊読書人』とか、『日本読書新聞』など)になっています。評論家がものを書くというのも、けっこう場が限られているともいえるでしょう。啓蒙誌も、『国文学』は休刊になってしまったので、『解釈と鑑賞』だけというのが現実です。

ところで、永井荷風作と伝えられる、「四畳半襖の下張り」の現代語的翻案が、『国文学』誌の荷風特集に加えるという意図で、仕事を始めたところ、雑誌が休刊になってしまったので、別のところに発表する、というのをどこかで見たのですが、どこで見たのだか、わからなくなってしまいました。と思って、はてなのキーワード機能をを使ったら、『新潮』9月号の小林恭二さんの仕事でした。もちろん、『国文学』という雑誌の実名は出ていませんでしたが。

桶谷さんの文章の話ではなくなってしまいましたね。ときには、こうした考え方の人の文章をよむのも、気分転換にはなります。在職死してしまった、同僚の方が、桶谷さんのファンだとかつて言っていました。