ご幼少のみぎり

ガルシア=マルケスの『幸福な無名時代』(ちくま文庫、旦敬介訳、1995年、親本は1991年)です。
作者が、1958年、ベネズエラで週刊誌の記者をしていたときの文章を集めたものです。日本で編集されているので、直接的な原本はないようです。
もちろん、当時の作者が、のちにノーベル賞をとるとは誰も思っていないわけですから、こうした文章も、当時は単なるレポートとして消費されていったわけです。
ベネズエラといえば、最近も中南米改革の先陣をきっているという印象がありますが、この1958年にも、当時の独裁政権が倒れたのだそうです。そうした伝統も、この本の中からさぐることもできます。
また、水不足にあえぐカラカスのまちの近未来を予測した架空記事、「1958年6月6日、干上がったカラカス」(4月11日号の雑誌に発表されたそうです)も、そういう目で見ると、先見的なものもあります。
このような、後から思えば…という人が、今はいるのでしょうか。