見通し

加藤聖文さんの『「大日本帝国」崩壊』(中公新書)です。
戦争が終わったときの、日本支配下の各地が、いかに帝国敗戦の中でうごいていったのかということが、朝鮮・台湾だけでなく、「満洲国」や南洋群島樺太・千島の状況も含めて叙述されています。
日本の敗戦必至という状況下で、支配していた側と、支配されていた側とが、どのように動いていったのかを考えると、戦後処理の責任ということも考えてしまいます。朝鮮の場合、総督府は、ソウルにいた呂運亨という独立運動家に、いわば丸投げするような形で、政権移譲をはかったようです。しかし、彼のグループは、戦後の状況でイニシアチブをとりきれないまま、米軍が進駐し、呂はアメリカのあと押しで韓国に戻ってきた李承晩の手のものによって、暗殺されるのだそうです。ほかにも、中国にいた臨時政府の代表だった金九もテロにあいますし、共産派の中心だった朴憲永はロシア帰りの金日成に実権を奪われ処刑される、というように、「生き残ったものが正義」という状態になってしまいます。
朝鮮だけが、悲劇というわけではないのですが、そういう、分断国家をうみだしたことのおおもとが、日本の支配であったということは、きちんと認識しなければいけないのでしょう。連合国側の処理にもひどいところがあったことはあったにしても。