あおった責任

NHKの『その時歴史が動いた』は、引き揚げの話でした。
満洲」からの引き揚げとなると、葉山嘉樹が現地で亡くなったこととか、徳永直や島木健作が開拓団を訪れて見聞記を発表したりとか、山田清三郎が『満州国』で文学運動をしようとしていたとか、そういう、文学者が行ったことを気にしないわけにはいきません。
一部のエリート(夏目漱石の学生時代の友人だった中村是公が満鉄のお偉方になっていたりとか)はともかく、開拓団として海を渡った人の多くは、内地でもよい暮らしをしていたわけではないでしょう。プロレタリア文学運動にかかわっていた作家たちのなかに、そういうところから、開拓団に同情していく人が現れるのもわからなくもありません。その点で、まったく責任がないとはいえないのでしょう。
しかし、内地できちんとした生活を保障することができずに、『外へ』という意識だけを育てていった、当時の支配している側の責任は重大です。番組では、民間人の引き揚げに関して、日本政府は無策どころか、「棄民」までいっときは決定していたということも明らかにされました。そういう政府をもったことも、忘れてはいけないのでしょう。