熱意のあかし

原健一さんの『葉山嘉樹への旅』(かもがわ出版)です。
原さんが、葉山の夫人と知り合ってから、葉山作品を通して、戦時中の生活などに思いをいたすという、作家の生涯を探究する過程を描いた、小説的な作品です。
ですから、葉山を探ろうとする主人公の姿をよみとるべきもので、この作品で葉山に関して何か新しいものを発見しようとするのは、少し方向が違うように思えます。
とはいえ、主人公の住む松本市は、葉山が長い年月を過ごした長野県のなかにあるわけですし、そうした地元の「作家」の実像をさぐろうという、主人公の情熱をきちんと評価しなくてはいけません。
そうした、全国各地での、地道な活動が、埋もれかけていた事実を掘り起こせるのですから、それはそれぞれの地域の文学運動が誇っていいことだと思います。
前にも、佐藤優が、葉山は労農派のグループに近かったから共産党はあまり語らないのだと、まことしやかに対談か何かで語っていましたが、それが誤りであることも、こうした活動は明らかにしています。