回避

紙屋高雪さんの『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(築地書館)です。
彼は、「紙屋研究所」というサイトを運営していて、そこに掲載されたものをいくつか選んで書籍化したものです。
タイトルどおり、マンガの評論が多いのですが、マンガにみられる社会的なものを探り出し、それを〈コミュニスト〉の立場から批評するというのが基本的なスタンスです。「漫画を通じてそれが生活・労働の全般や政治・経済・思想といった別の世界につながっていることをむさぼる快楽」を彼は追求しようとしているのです。
一方では、著者は、柊あおいさんのかつての作品『星の瞳のシルエット』(『りぼん』掲載)について語るときに、こうもいうのです。
「だれが、小汚い現実に似せた薄っぺらな「現実」漫画を読むか。/飛翔してこそ虚構ではないか。/おれたちは"ドラマ"が読みたいのだ」とも語ります。そこの両面を出しているところに、紙屋さんの批評のおもしろさがあるのでしょう。
だからこそ、彼が回避している大手少年三誌(ジャンプ・マガジン・サンデーのことです)掲載作品について、語ってみてほしいと思うのは望蜀でしょうか。『ワイルドライフ』や『ゴッドハンド輝』、『あいこら』や『初恋限定。』、『花形』や『P2!』に関しての、彼の話も聞いてみたいものです。