自己責任

藤本武さんの『アメリカ貧困史』(新日本新書、1998年)と、橘木俊詔さんの『格差社会』(岩波新書)とをたてつづけに読みました。橘木さんの論に関しては、以前『アメリカ型不安社会でいいのか』をここで紹介したことがあるので、再論はしませんが、藤本さんの本でアメリカ社会の歴史をながめることで、アメリカをお手本にすることの危うさが見えてきます。
ご存知の方も多いでしょうが、アメリカには健康保険の制度がありません。民間の医療保険しかないので、お金がないと医者にもかかれないのです。実は、アメリカはまだ若い国で、というのは国の歴史だけでなく、国民の年齢構成が若いのです。平均寿命もそんなに高くないですし、高齢者の比率も日本のような状態ではない。働き盛りの人がたくさんいる社会です。
そうした中で、自己責任がいわれれば、貧困層への目配りなどなくてもいい、という形にもなるでしょう。記憶に新しいのが、去年のハリケーンで、市長だかが、避難勧告は市のホームページで出したと、平然と言い放ったことです。アクセスできない層は社会に存在しないかのように。
日本でも、求人をインターネットでしかしない会社もあるとか聞きますけど、公共機関がそういう状況なのが、アメリカなんでしょう。
そんな社会をお手本にはしたくないですね。小学校からおじいちゃんのすすめで私立学校に通ったとかいうおじいちゃん子にはわかるのでしょうかね。