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橘木俊詔さんの『日本の教育格差』(岩波新書、2010年)です。
最近の動きの速さは、こうした本をすぐに過去に追いやろうとすることもあるのでしょうが、今の現状を知るにはいいものだと思います。
実際、今の大学進学率が約5割、これは1955年の高校進学率にほぼ同じです。当時の大学進学率は約1割。となると、5割が中卒で就職、高校生の4割が職業科に在籍していたそうなので、その人たちは多くは高卒で就職したでしょうから、5割の4割で全体の同年齢層の2割が職業科から就職、2割が普通科から高卒で就職、1割が大学進学となります。
中卒:職業科:普通科:大学=5:2:2:1 ですね。

それを現在にあてはめるとどうなるか。正規雇用のわくが当時と変わらないものならば、高校進学率が9割、職業科の割合が高校生の2割ですから、こうなります。
中卒:職業科:普通科:大学=1:2:2:5

すると、職業科の社会に占める割合はそんなに変わらない(職種は時代による変動はあり得るでしょうが)とすると、かつての中卒の仕事も、大学出はやらないと、社会は回らないということになります。まして、正規雇用のわくが減少して、非正規雇用ですませようという企業が多くなっている今、かつての『1』にはいる、有力大学への競争がますます激化するということになります。

社会の価値観も含めて、全体で考えなければいけません。