発見

青木冨貴子さんの『731』(新潮文庫、親本は2005年)です。
青木さんは米国在住のジャーナリストで、ピート・ハミルさんの配偶者の方です。文春新書の『目撃 アメリカ崩壊』(2001年)は、「9.11」の現場でのルポとして、貴重なものです。(青木さんのお父様は、社会科学書をよく出している青木書店の社長さんだったそうです。知らなかった)
青木さんは、石井四郎部隊長が、戦後日本に引き揚げてきたときにつくっていたノートを発見し、それを解読することで、731部隊がどのように戦犯の免責を得たのか、ソ連の追及をどのようにかわしていったのかをさぐります。戦後日本を占領したアメリカが、どのように日本の支配層を温存していったのかということの、ひとつのあらわれを示しています。そう思うと、占領時代の闇は、もっと追及されなければなりません。
ところで、731部隊については、常石敬一さんや、森村誠一さんがそれぞれの立場から追いかけています。森村さんは、いろいろな騒動に巻き込まれた結果、現在はあまりその分野での活動はされていないようですが。
森村さんの最初の本が出たころ、学生仲間の研究会で、森村さんと共同して取材していた新聞記者の方を呼んだことがありました。ところが、その人は、自分の話をおとなしく聞いてくれる会だと思っていたらしく、森村さんの著書に対して、いろいろと注文めいたことを報告者が言うと、途中で話をさえぎって、自分の話をし始めたのです。何でも、その新聞に連載の第1回が掲載されると、その日のうちに○社や□社から「単行本にするときはウチで」という趣旨の電話がきたというのに、新聞の発行元と縁の深い×社からは、ちっとも連絡が来ない。そのために、結局単行本は×社からは出なかったので、そうした『鈍い』感覚では困るといったのを覚えています。そしてその人は、「次の用事がある」とか言って、一方的に中座してしまいました。
その人が今何をしているのかは存じませんが、青木さんの文庫本の解説は、佐藤優氏よりはその人に書いてもらったほうがおもしろかったのではないかと、今は思っています。