中条百合子と宮本百合子

難しい話になりますが、『国文学 解釈と鑑賞』(至文堂)が、百合子の特集をしています。刺激的な論文が多くて、一つ一つ紹介すれば、このブログの材料にも事欠かないとは思いますが、まずは、百合子と湯浅芳子との関係を。
『道標』を何回か読んではいるのですが、最初は自殺する弟に感情移入していたと思います。そのあと、ソ連崩壊の頃によんだときは、百合子が描くヨーロッパの貧富の格差について考えたと記憶しています。そのあと、百合子を読む会で、浅尾大輔さんたちと読んだときには、メイエルホリドについての評価が辛いように、書いた時期の百合子の意識によって、記述が微妙にずれているのではないかという意識をもったのです。
伸子が、一度結婚生活に失敗してから素子と共同生活をするのですが、伸子には〈男と結婚して子どもをつくるのがまっとうな生活だ〉という意識が、水面下にあるということは、「二つの庭」にも「道標」にもひそかに流れていたのは感じていたのですが、そういう意識をもっていると、今回の特集の中で、「二つの庭」を論じた水田宗子さんの論文はおもしろく読めました。
細かい話は、今後するかもしれませんが、とりあえず、買ったばかりの感想です。
宮本百合子中条百合子時代の自分を、どのように観て作品の登場人物としていったのかということは、もっと検討されるべきなのかもしれません。