出発点

木下武男さんの『格差社会にいどむユニオン』(花伝社)です。
雇用融解ともいわれる現状に対して、いままでの企業別組合ではなく、業種別の個人加盟の組合によって、横断的に労働相場を決めていくたたかいが必要なのだと訴えています。たしかに、企業別組合の弱点はたしかにありますが、議論の必要なところもあるように思います。
ひとつは、日本の労働運動の歴史をふりかえりながら、ホワイトカラーもブルーカラーも同じ企業別組合に組織されたことが、今日の低迷の一因だという趣旨をいっているところです。同じ企業に勤務していても、職種がちがえば要求が違うのは当たり前ではあるでしょう。しかし、たとえば松田解子さんの作品(澤田出版から選集が出ています)を読むと、戦前の鉱山での職員と工員との格差のはなはだしさが印象に残ります。それは資本の側が分断して支配するための材料ではあったのですが、そうした厳しい差別を受けていた労働者たちにとって、職員と工員とが同じ土俵で扱われることは、はたしてまずいことだったのでしょうか。
男女差別のことも、「同一価値労働同一賃金」も、原則は正しいのだと思います。問題なのは、それを成果主義導入の口実にさせないことなのですから、それと「労働力の再生産」のための保障をどうするかということ(養うのは「夫が妻を」だけではありません。親は労働できない子どもを養わなければならないのです)という問題もあります。これは男女共同社会でも必ず起きる問題でしょう。そのへんも含めた議論は必要だと思います。
そういうことも含めて、これからの労働運動を考えるには、大切な本ではあるでしょう。