移転

内海繁(1909−1986)の『播州平野にて』(未来社、1983年)です。
著者はながく姫路で文化運動をやってきた人で、その経験にもとづく文章を集めたものです。〈ふるさと〉の顕彰が、限られたものになっていること(相生がうんだ偉人として大山郁夫が語られることはないこと)への批判など、おもしろいものがあります。
その中で、宮本百合子の「播州平野」に登場する姫路の宿がどうなっているかの探訪記があります。すでに1955年に、その宿をつきとめ、まだ営業していたそこのおかみから、泊まったことを覚えているという証言を引き出したかたがいたそうです。
今回(1970年)、著者は、姫路の文学仲間とそこを訪れます。すでに宿屋は廃業していて、そこは料理店になっていました。その建物を買い受けた料理店の主人の妻が、〈ここが宿屋だったときに、有名な女性作家が泊まったことがある〉という話を聞き、「播州平野」に思い当たって、小説の描写とつきあわせたら、同じだったということなのだそうです。
それから40年以上たっているのですが、そのお店自体は、姫路市内で営業しているようです。けれども、その場所はJR線の南側なので、1970年のときのお店の場所とは違っているようです。
今その場所はどうなっているのでしょうね。