先端

桜井博儀さんの『元素はどうしてできたのか』(PHPサイエンスワールド新書、2013年)です。
ビッグバンからの元素の生成や、93番以上の人工元素の合成はどうするのかなど、最新の情報も出しながら、原子や元素にかんして述べています。
そのなかの最後のほうで、日本の素粒子研究の歴史として、戦前の理研サイクロトロン建設の話題がでます。世界で2番目に完成したものだったということです。
零式戦闘機の開発でも、工場からテスト飛行をさせる滑走路まで牛が曳く荷車で運んだエピソードがあるように、どうも戦前の日本は、頂点は高くても裾野が全然ないようなところがあったように見えます。最近、〈戦前は暗くない〉と言い立てる人がいるようですが、最先端ばかりみていれば、たしかにそういう側面はあるのでしょうが、それでいいのかという視点は必要でしょう。