やられたこと

莫言『続 赤い高粱』(井口晃訳、岩波現代文庫、2013年、親本は1990年、原著は1987年)です。
抗日戦争時代の山東省を舞台にした作品で、話者〈わたし〉(作者と同年代のようです)の祖父母や父親が当時をどのように生きたのかを描くものです。
当然、日本軍に対してどう戦うかが問題で、国民党にも八路軍にも距離をおく話者の祖父が中心になります。たたかう相手は日本軍だけではなく、日本に協力する傀儡政権軍もあるというにぎやかさですし、八路軍とも同士討ちのようなかたちで戦火を交えるようなところもあります。
同時代のことを描く、火野葦平の作品と比べてみるのもひとつの方法かもしれません。火野が書かなかったことを、作者は見ようとします。それが、侵略された側のモラルということにもなるのでしょう。