節約

今年のセンター試験の文章についてです。
評論の齋藤希史さんの本に関しては、このブログの2007年4月18日づけで、紹介しています。おもしろいものを探してきたのかなとも思うのですが、題材のなじみにこだわると、けっこう厳しいのかもしれません。
小説は岡本かの子の作品です。「快走」という1938年の作品で、女学校を出て家で家事手伝いをしている女性が、自分の屈託を多摩川の土手を走ることで昇華させようとすることと、それをめぐる家族のすがたを描いています。
作品の最初に、主人公がきものを縫うところがあります。1938年といえば、物資が徐々に逼迫してきて、スフとかいう合成繊維があらわれたころでしょうか。そこで、古いきものをほどいて、もう一回縫い直して着ようとするのですね。兄に対して彼女が「兄さんも会社以外はなるべく和服で済ますのよ」というのも、そのほうが布地の節約になるからです。洋服はほどいて縫い直すことはできませんから。
微妙なところに、世相はでるのですね。