真摯であれ

清岡卓行『藝術的な握手』(文藝春秋、1978年)です。著者が井上靖を団長とする訪中団にくわわって、1976年の11月から12月に中国を訪れたときのことを書いたものです。
ちょうど、向こうでは〈四人組〉追放の直後であったので、かれらの悪行と、それに耐えた人たちのことが、けっこう話題になっています。
もちろん、いまからみれば、まだ〈文化大革命〉の渦中にあったといってもいい時期ですから、いろいろなものが過渡期状態ではあったでしょう。けれども、これから新しい時代が始まるのだという、一種の高揚感に中国社会がつつまれていたことを訪中団のひとびとは感じていたようです。その意味では、貴重な証言なのかもしれません。
ただ、〈文化大革命〉期に起きた、いろいろないざこざに対しての総括は、このときにはまだできていなかったことは、考えておかなければなりません。訪中の人選も、きっといろいろとあったことでしょう。事務方をつとめられた人たちの善意と努力は尊重すべきですが、それだけではすまない、厳しい歴史もあったことは、覚えておきましょう。