はしばしに出る

小林信彦さんの『紳士同盟』(扶桑社文庫、親本は1980年)です。
もともとは『週刊サンケイ』に掲載されていた小説だというので、今回扶桑社から再刊されたのですが、もともと新潮文庫からの移籍のようなものなので、解説にも新潮文庫のときのものがおまけとして収録されています。
作品自体は、1979年の東京を舞台に、男女四人が組になって、戦前の伝説の詐欺師とともに、コン・ゲームをしかけるというものです。それこそ詳細を語るわけにはいかないのですが、だまされるほうにも、おのれの趣味が昂じてという側面があるので、あまり後味はわるくありません。
やはり、小林さんの作品なので、はしばしに、1979年の時代風俗や、戦後東京のおもかげも出ていて、そこはのちに『東京繁盛記』(1983年、中央公論社、今はちくま文庫)の著者だと感ずることもあります。

最近、重いものばかりなので、たまにはこうしたものも、いいのかもしれません。なにせ、1日で読み終えましたから。